8つの連作短編。中途半端な3.5というのは、隠蔽捜査シリーズの外伝もしくはスピンアウトということらしい。竜崎の幼なじみであるキャリア同期の伊丹が主人公にはなっているんですが、主眼は、あまり登場しないにもかかわらずやはり竜崎です。伊丹は颯爽として人当たりのいいキャリアという印象でしたが、中身はわりと凡庸で思い切りの悪い、でも人間味のあるタイプだったんですね。竜崎とは対照的な人物だからこそ、二人の友情が成り立つのでしょう。
伊丹が思い余って竜崎に電話相談すると難題が見事に解決する、「困ったときの竜崎頼み」というパターンが数編続くので、ちょっとマンネリだなあと思っていたら、最後の二編は伊丹が竜崎を助けようとする話で、発表順にせずに巧く構成されていました。実は、たいして竜崎の助けにはなっていないのですが、伊丹本人は竜崎をフォローできて満足みたいです。小学校時代のいじめの真相も明らかになります。あのころから、竜崎に一方ならぬ関心を抱いていた伊丹は、どんだけ竜崎を好きなんだろう(笑)。