壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

どうする・どうなる口蹄疫 山内一也

今日、こちら静岡は真夏日(気温30度超え)でした。フェーン現象で西風が熱波をもたらし、庭の花がいっぺんにしおれてしまいました。
今夏も猛暑になるのでしょうか。浜岡原発全面停止については、節電で協力することにやぶさかではありませんが、もうエアコンなしでは暮らせない身体になっているかも。
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どうする・どうなる口蹄疫 山内一也
岩波科学ライブラリー175 2010年 1200円

2001年に宮崎県で、日本では約100年ぶりに発生した口蹄疫は短期間で封じ込められて、日本の防疫体制が国際的にも評価されたのですが、2010に再び発生した口蹄疫は県外にまで広がる大規模なものになってしまいました。なぜ初期に食い止められなかったのか、なぜ全頭殺処分という事態になってしまったのかが、口蹄疫対策の歴史を踏まえて、わかりやすく解説されています。

2000年以上前から知られていた口蹄疫は、もともと殺処分をするまでもないくらい、家畜の伝染病としては症状の軽いものです。しかし畜産が盛んになって国際的な取引が行われるようになると、貿易上の優位性を保つために(自国は口蹄疫清浄国である!口蹄疫にかかった動物は一匹もいない!と明言できること)全頭殺処分という方式が世界中でとられるようになりました。

口蹄疫に対してワクチン接種は有効でしたが、ワクチン接種をしたときに体内に作られる抗体が、自然感染の場合と区別できないために、ワクチン接種をして口蹄疫にかからなかった家畜も結局は殺さざるを得ない状況でした。しかし最近は、遺伝子組換え技術によって作られたマーカーワクチンを接種することによって、口蹄疫にかかった家畜と区別できるようになり、「殺すためのワクチン」から「生かすためのワクチン」が使えるようになっていました。しかし、2010年の宮崎での大発生の際には、農林水産省は「生かすためのワクチン」を十分に活用することができず、一刻も早く口蹄疫清浄国に復帰するために「殺すためのワクチン」にこだわり、あのような結果を招いてしまったのだという主張です。国際間の防疫対策は、政治・経済が絡んできて、科学の面ばかりでは解決できないけれど、お役人の「由らしむ可し、知らしむ可からず」という意識はBSEの時とちっとも変わっていないのね。(2011年1月読了)
この本を読んだ時には、宮崎県は口蹄疫鳥インフルに続いて火山の噴火で、大変に気の毒だとメモってあったが、3.11以来いろいろな基準がひっくり返ってしまった・・・。