壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

竜が最後に帰る場所 恒川光太郎

さきほど、東京から帰ってきました。計画停電もなく、スーパーの棚も空きがなくなっていました。

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竜が最後に帰る場所 恒川光太郎
講談社 2010年 1500円

恒川さんの新作短編集。タイトルは似ているけれど、前作『南の子供が夜いくところ』のような連作短編ではなく、幻想、ホラー、ファンタジーなどバラエティーのある作品集です。

『風を放つ』:青春のほろ苦い悔恨、とでもいうのか、胸の奥にかすかな痛みをもたらす。
『迷走のオルネラ』:DVを受けた少年は成長した後に復讐に捕らえられる。その生に救いはあるのか。
『夜行(やぎょう)の冬』:冬のある夜に「シャラン」と鈴が鳴ると「夜行様」が近づいてくる。同行して命がけの雪道を歩き戻ってきた町は、しかしパラレルワールド。過去と現在を・・そして未来を取り替え続ける。これぞ恒川ワールド。
『鸚鵡幻想曲』:出会ったアサノは擬装集合体を開放する。郵便ポストは無数のナナホシテントウムシに、森の中の自動販売機は無数の硬貨に分解する。メルヘンチックで、映像にしたらすごく効果的だろうなとは思うのですが、ヨクワカランノデス。
『ゴロンド』:兄弟たちと共に池の中で孵化したゴロンドは、あまたの捕食者の手から逃れて無事コロニーにたどり着く。竜であるゴロンドの旅の第一章。絶滅危惧種なのは知っていたけれど、竜って、爬虫類じゃなくて、両生類なのかしらね。(2010年11月読了)