壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ソルハ 帚木蓬生

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ソルハ 帚木蓬生
あかね書房 2010年1400円

主人公の女の子ビビは1987年に生まれました。アフガニスタン共和国が成立した年です。ビビが5歳から15歳になるまでの、激動のカブールですごした10年間の物語です。ソ連軍が撤退したあとの内戦、タリバンが支配した時代、そしてアメリカによるアフガニスタン空爆・・と複雑なアフガニスタンの歴史が、少女の目を通して素直に描かれています。

タリバン占領下では、女性は教育も労働も禁止され、一人で外出することすらできませんでした。それでもひそかに教育を続ける母はタリバンに殺されました。それでも我慢強く勉強を続けるビビの思いが伝わってきます。あとがきにあったアフガニスタンからの女子留学生の話で、その思いはいっそう現実味を帯びました。

帚木さんの(多分はじめての)児童文学作品です。クラウス・コルドンのテイストに近いでしょうか。しかし、小説の背景はまだ現在進行形で単純に割り切れる状況ではないはずなのに、そのあたりが少し物足りないような気がします。(2010年12月読了)