壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ

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ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ
沼野恭子訳 新潮クレストブックス 2004年 2000円

リュドミラ・ウリツカヤの「ソーネチカ」と「それぞれの少女時代」の沼野恭子さんの翻訳がとても読みやすかったので、現代ロシア文学に興味がわいてます。

キエフで新聞の死亡記事を書いているヴィクトルは、動物園でお払い箱になったペンギンのミーシャと暮らしています。頼まれて、有名人の追悼記事を生前に書くという仕事をしているうちに、自分が書いた記事が次々と使われていく、つまり彼ら有名人が死んでいくことに気が付きました。それをきっかけに身辺は不穏となり、不可解な出来事に巻き込まれていきます。

ソ連邦崩壊後、1990年代のウクライナは政情不穏でマフィアが暗躍している、そんな中でのヴィクトルの孤独、それに重なるようにペンギン・ミーシャの孤独も伝わってきます。預かったギャングの娘ソーニャ、シッターを頼んだニーナと、ペンギンと擬似家族のように日常を暮らすという不条理風味の物語なのですが、飄々としていて、かつユーモラスでファンタスティック!?

最後は急展開で意外な結末。ペンギンのミーシャの行く末は気になるところです。ミーシャについては続編(「カタツムリの法則」:未翻訳)があるらしい。「大統領の最後の恋」を図書館で見つけましたが、「極厚」だったので借りるのは先延ばししました。