壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

追伸 真保裕一

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追伸 真保裕一
文藝春秋 2007年 1500円

貰い物ミステリです。十数年ぶりに読んだ真保さんの作品。今までずっ~と「まほ」さんだと思っていましたが「しんぽ」さんだったのね。索引を作ろうとして気が付きました。確かデヴュー作『連鎖』から『ホワイトアウト』までは確実に読んでいるのに、まちがって思い込んでいたなんて・・・。もう一つの思い込みは題材のこと。初期の作品はお役人や団体職員が主人公だったので、ずいぶんと違う作風にとまどいました。全編書簡形式のミステリです。

ギリシャに単身赴任した夫山上悟と、これからギリシャに向かうはずだった妻美奈子の間でやり取りされる手紙。美奈子が一方的に離婚を切り出した理由は何か。もう一組は五十年前に美奈子の祖父母の間で取り交わされた手紙。祖父の死後に見つかったその手紙の中に、刑務所の中にいる祖母と無実を信じて奔走する祖父の姿がありました。どんな罪を犯したというのか。

家族の隠された過去という点で山口瞳「血族」を思い出しました。二組の男女の時代を越えて重なりあう部分がメインテーマでしょうから、ミステリ部分はわりと平凡です。書いた手紙の文章のトーンが四人とも似通っているように感じましたが、改まって長い手紙を書くと、こんな風な文章になってしまうということかもしれません。



近頃はメールばかりで手書きで長い文章を書くことがなくなり、どうしても手書きで書かなければならない時には、いったんワープロで推敲した文章を縦書きに直し、それを筆写しています。なんか変だなあと思いつつ・・・。