壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

魔性の子 小野不由美

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前回読んだ「風の海 迷宮の岸」で、異界に戻された泰麒(高里)が再び現代の日本に戻っているようです。無事に泰王を選び泰国の再興に尽力しているはずの泰麒が一年と少しでまた蓬莱に戻ってしまったのはなぜなのでしょうか。

十歳の頃に高里が神隠しにあった高里は、今は私立の男子高に通う二年生ですが教室で孤立していました。高里の周りでは次々と凄惨な事件が起こり、高里は祟ると恐れられていました。彼の孤独を理解していると感じている教育実習生の広瀬は、高里を庇い続けます。

執筆順に、この作品を十二国記シリーズよりも前に読むべきでした。あの異世界をまったく知らなければ、あまりに不思議で異常な出来事にもっと強い印象を持ったかもしれません。彼の周りに起きる事件はこの世界しか知らなければ恐怖そのものですが、あの確固とした異世界の片鱗であれば何の不思議も恐怖もありません。だからもうホラーとしては読めませんでした(怖くなくてよかったけれど・・)。

この物語を書いた時点で著者の中にはすでに十二国の精緻な世界観が出来上がっていたことに驚きます。