壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

家族 山口瞳

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家族 山口瞳
文藝春秋 1983年 1500円

「血族」では、母親がひたすら隠していた一族の過去を明らかにして、その母の特異な人物像を描いた著書が、本書で父親の過去に迫っています。この本は刊行されたばかりの頃に読んでいて、父親の過去の部分だけは記憶していましたが、それ以外の部分はまったく失念していました。

自分の親の秘密を知るというできれば避けたいような行為をおこなう戸惑いを表現しているのは、偶然出会った小学校の同級生と競馬場に入り浸っている場面です。昔、化粧をした母親と暗くなってから南武線の土手を登ったという記憶の場所はどこだったのかを、同級生と語り合いながら馬券を買い続けます。

半分は予想していた父親の過去がハッキリと証拠立てられた時の思いと、競馬のトラブルに巻き込まれた怖い思いが重なるという仕立てが巧いなあと思います。でも、以前に読んだ時にも、競馬や馬券の仕組みがまったく分らないので記憶に残っていなかったようで、未だに、競馬やそれにまつわる裏の世界の出来事がやはり理解できなくて、消化不良の感じです。