壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

死神の精度 伊坂幸太郎

イメージ 1

死神の精度 伊坂幸太郎
文春文庫 2008年 550円

今までに読んだ伊坂作品(「陽気なギャング」「アヒルと鴨」)は面白かったけれど、予約してまでは・・・という感じです。ただ、もらい物が何冊か積んであります。

「死神を語り手にした物語」とは言っても、ちょっとした人情物です。六篇の連作は、「千葉」という名前をもつ、当局?から調査のために派遣された死神が担当したケースです。人間ではなく死神なので、死を直前にした場面でも常に無感動ですが、人がよく使う言い回しに疎いので、とぼけたユーモラスなキャラクターという設定です。死神の中でも仕事熱心な方なので、期限いっぱい対象に付き合って、たいていは死の直前までを見届けることになるのです。

死神「千葉」が担当した対象だけメモしておきます。
「死神の精度」電気メーカーお客様苦情係の若い女
「死神と藤田」昔かたぎの中年ヤクザ
「吹雪に死神」吹雪の山荘に泊まる中年主婦
「恋愛で死神」不器用な片恋をしている青年
「旅路で死神」殺人を犯したばかりの少年
「死神対老女」海辺の美容院の70歳の美容師

最後の話が前の方の中途半端な終わり方の話とさりげなく繫がっているので、全体としてのまとまりが良くて楽しめましたよ。こういう仕掛けはホントにうまいですね。ただ欲を言えば、六篇続けて読むと、死神のキャラクターの作り方が少しくどい気がしますし、言い回しにいちいち引っかかってくるのが気になったり、語り口に違和感があったり、人情話がわりとウスッペラだったりと、ああ、やっぱり若い読者向けなんだなあ~。(スミマセン、年寄りのヒガミです。)