壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

地図もウソをつく 竹内正浩

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地図もウソをつく 竹内正浩
文春新書 2008年 750円

実際に行くことができなくても、本を読みながら地図を眺めるのが私の楽しみです。最近はネット上の地図ばかりを便利に利用しています。Google mapやearthの威力はたいしたものです。一方、地図専門の書店が休業したりと、紙の地図はずいぶんと売れなくなったでしょう。国土地理院刊行の紙の地図は需要が急激に減っているそうです。市町村合併から国の統合分裂とめまぐるしく変化する世の中に、印刷された地図ではついていけないのですね。

題名の面白さに惹かれて、ちょっと古い地図の話を読みました。富山の放生津潟が新港として整備されていく過程、大夕張が炭鉱町として急激に栄えたのちダムに沈んでいく様子が何枚もの古い地図から読み取られていきます。古い地図が見にくいのが難点ですが、なかなか面白いものです。

国土地理院の二万五千分の一の地図を、西表島稚内で比べると地図の『大きさ』が違うそうです。これは図幅の経度差を常に七分三十秒にしているためです。経度差を同じにすると実際の距離は、赤道に近いところで最大になり、極点でゼロになるためです。地図の幅も西表で50センチ、稚内で39センチと11センチも違うことには驚きました。

地図がつくウソは、要するに人間がつくウソです。国防上の理由で地図を改ざんすることは『戦時改描』というそうですが、戦時中東京の水源である多摩湖狭山湖が平坦な草原になっていたり、軍事施設が隠されていたりするのは当たり前のことでしょう。でも米軍の詳細な空中写真があったので、まあ気休めだったとか。現在、自衛隊が作成している地図は素晴らしいらしいのですが、一般には入手できないということです。これも、Googleでは丸見えですね。

それでも日本は地図を自由に出版でき国外持ち出しも制限がありませんが、東アジア諸国ではまだまだ制限があるとか。確定しない国境線を自国の都合のいいように書くのも当然のことでしょう。コンピューターソフトや三次元地図パズルの製作を中国に発注したところ、中国の主張する日本国土の認識を押し付けられたというのはよく知られた話でしたし、地図の現在の状況に対する踏み込みが浅くて期待はずれでしたが、新書なのでしょうがないです。


ところで、国土地理院のホームページでは基盤地図情報がネット上で見られますが、よく見ると、なんと!我が家の付近の道が間違っています。これでは誰も我が家に来られません。ゼンリン地図やグーグル等では航空写真を基にしてあるものは間違っていないのに。
『地図もウソをつく』ではないですか!