壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

妖怪画本・狂歌百物語

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妖怪画本・狂歌百物語
京極夏彦 多田克己編 国書刊行会 2008年 3990円

京極夏彦の本かと勘違いして借りたのですが、江戸時代の古書である『狂歌百物語』(天明老人編・竜斎閑人正澄画)を収録した本に京極さんが巻頭文を寄せているものでした。嘉永六年(1853年)に版行されたのでもう幕末のころです。小泉八雲がこの本に材をとったということが知られているそうですが、それを寺田寅彦が書いているのが小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」

以前に読んだアダム・カバット著の「江戸の化け物たち」に出てきた妖怪やら化け物が面白かったのですが、これはいわば一次資料。この本の原本はその妖怪(96種)を兼題にした狂歌を集めたもの。江戸時代に流行った百物語と狂歌と妖怪がいっしょになっています。

京極夏彦さんの序文で、江戸時代の粋としての妖怪や化け物の話が面白い。地方の「怪しいモノ」「不思議なコト」が都市部に集中して一般化抽象化されたのが「化け物」であり、「妖怪」はそれを雛形として生成された個であり、区別されるべきものであるそうな。また「化け物」は都市で生み出された知的遊戯のためのツールであるとか。

京極さんと同様の妖怪研究家である多田克己さんによる解説も面白くて、「豆腐小僧」はアダム・カバット氏によれば豆腐の販促のためのキャラクターではないかというが、多田さんは豆腐のように柔らかい(「強くない」→「怖くない」)妖怪という洒落ではないかと。

絵はパラパラ眺めましたが、たくさん載っている狂歌のほうは拾い読みしただけです。個々の狂歌には解説がまったくないので、よく分からないものが多いのです。でも解説は江戸のセンスから言えば野暮そのものだそうです。

近代以降狂歌はすっかり廃れてしまったけれど、化け物や妖怪は現代に形を変えてよみがえりつつあるようです。「口裂け女」などの都市伝説もそうですが、今はやりの「ゆるキャラ」なんて私には妖怪のようにしか見えません^^。

そういえば、京極作品を一冊も読んでいません。怖いのに当たらないように選んで読み始めたいとは思っています。