壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

本から始まる物語

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本から始まる物語
メディアパル 2007年 1300円

18名の作家が「本」「本屋」をテーマにした短編で、書店向け広報誌『しゅっぱんフォーラム』連載を単行本化したものだそうです。読んだことのない作家が半分以上です。「やはりうまい!」と感じ入るものから「やはり苦手!」と思うものまでありましたが、作家それぞれの個性が出ていて楽しめました。

「飛び出す、絵本」恩田陸/「十一月の約束」本多孝好/「招き猫異譚」今江祥智/「白ヒゲの紳士」二階堂黎人/「本屋の魔法使い」阿刀田高/「サラマンダー」いしいしんじ/「世界の片隅で」柴崎友香/「読書家ロップ」朱川湊人/「バックヤード」篠田節子/「閻魔堂の虹」山本一力/「気が向いたらおいでね」大道珠貴/「さよならのかわりに」市川拓司/「メッセージ」山崎洋子/「迷宮書房」有栖川有栖/「本棚にならぶ」梨木香歩/「23時のブックストア」石田衣良/「生きてきた証に」内海隆一郎/「The Book Day」三崎亜記

18編もあると、アイデアがかぶります。本に対するイメージは万人共通ということでしょうか。本が羽ばたいて飛ぶのが三篇、本の背表紙の並びが暗号になっているもの二編、自分の読みたい本が並んでいる本屋二編、本が取り持つ男女の仲は多数。

「招き猫異譚」(今江祥智)は別格。長新太の小豆色猫の書皮の由来です。「本棚にならぶ」(梨木香歩)の奇怪さはなんなのでしょう。本にのめりこみすぎて、心身の不調を感じるときにはこんな風になりそうですけどね。梨木さんは実は未読ですが、こんな奇怪な妄想を持っているなら読んでみようかしら。

「The Book Day」三崎亜記では、役目を終えた本たちがいっせいに旅立ちます。本が渡りをする風景はスラデックにもありました。本が飛び立っていく場面はなかなか魅力的です。行き先はどことも分からない本の墓場らしいのですが、「忘れられた本の墓場」(風の影:サフォン)よりも、リサイクルセンターをイメージしてしまった。(近頃、夢がないです。)