壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

古道具 中野商店 川上弘美

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古道具 中野商店 川上弘美
新潮社 2005年 1400円

センセイの鞄」を図書館の本棚で探しましたが、あるはずもなく、こちらを借りてみました。

商店街にある古道具屋:中野商店でバイトをしているヒトミは、午後からはたいてい一人で店番をしている。店主の中野さんと若い店員のタケオが、八王子まで古道具を引き取りに行っているからだ。中野さんの姉のマサヨさんは町の芸術家で、喫茶店の二階で創作人形展を開いていた。

マサヨも一緒に店の奥で無駄話をしながら飲み食いをしていると、ヒトミとタケオは無口で、しゃべるのはたいてい中野さんとマサヨさんの姉弟。不器用なタケオとマイペースなヒトミの恋愛模様は、じれったいほどに進展しないが、年配の姉弟はそれぞれに血気盛んのようだ。

小さな事件はたまに起こるけれど、事件というほどのものではなく、日常は、まったり過ぎていく。登場人物は不思議ちゃんたちだけれど、不思議なこともたいしてない。中野商店の扱うのは骨董品ではなく単なる昭和レトロの古道具だから、商売にもあまり波風は立たない。時間が止まったように見えるが、それでもインターネットオークションとか時代の波は店にやってくる。そして中野商店は休業することになった。

二年後の後日談もあって、ほのぼのした気持ちで読み終えることができました。川上弘美さんは、芥川賞受賞作の「蛇を踏む」を読んだだけでしたが、こんな雰囲気だったかしら。もう少し読んでみましょう。