原爆を発明した科学者がアイスナインという物質をつくったとか、アイスナインが世界の滅亡にどうかかわっていたかとか、ボコノン教がインチキ宗教であるとか、なーんにも知らないで読んでみたかったなあ。
科学者のお遊びのように作られた原爆に、沼地での軍事展開に便利なアイスナイン。「ガラパゴスの箱舟」の世界滅亡も、この本の世界滅亡もありえない設定であるがゆえの薄気味のわるさ。敵対する聖者と抑圧する暴君の依存関係。軽妙な文章にも隠しきれないヴォネガットのあきらめ。
なんとなくどこかで知っていて、読んだこともないのに再読しているような気がして、面白さは半減したかもしれない。もちろん半分ぐらい面白さは残っていて、奇想天外なディテールは楽しめたけれど。
もっと若いときに、そしてせめて翻訳が出たばかりのころに読んでいればなあ。そしてできれば英語で読めて、文化的背景に造詣があればねえ。と、今日はなんだか後ろ向き。きっと本の読み過ぎ。