壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

百人一首 一千年の冥宮 湯川薫

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百人一首 一千年の冥宮 湯川薫
新潮社 2002年 1800円

もう一冊ミステリが続きました。科学解説書「トンデモ仮説の世界」 を書いている竹内薫さんの別名で書かれたミステリ。「QED百人一首の呪」関連で見つけた本です。探偵役は『シュレ猫探偵団』の面々。団長?は湯川幸四郎(著者の分身?)で、これはどうもシリーズ四作目らしい。行き当たりばったりにミステリを選ぶと、たいていシリーズ物の途中だったりして落ち着きません。

NYに住む早乙女隼と緒方真紀の元に届いた不気味な封書には、和歌の血書されたタロットカードが入っていた。脅迫と思しき和歌は、どうやら「百人一首」から採られているらしい。数ヶ月にわたり五通の封書が届いた後、完全密室と化した部屋の中で彼の弟分・次郎が謎の言葉を残して死亡する。偶然にも、日本行きのフライトに乗り難を逃れた真紀だったが、彼女はそのまま忽然と姿を消してしまった―。犯人は真紀なのか?次郎が残したダイイング・メッセージの真意とは…。

百人一首と百人秀歌、平家落人伝説、カバラ、黒魔術、魔女狩り、タロットカード、確率計算、群論量子色力学など登場する小道具が盛りだくさん。メインとなるミステリのトリックはそんなに複雑ではありませんが、日本では使えないものでした。だからNYか。探偵たちにも関係者たちにも帰国子女が多くて、911テロ事件とのからみ、二重国籍やらアイデンティティーやらこれも盛りだくさんで、おなかいっぱいになる薀蓄ミステリでしたが、百人一首の謎はQEDのほうがずっと壮大でした。でも割と好きです、こういうの。