壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ガラスの宮殿

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ガラスの宮殿 アミダヴ・ゴーシュ
小沢自然 小野正嗣 訳 新潮クレストブックス 2007年 3000円

図書館の新刊コーナーに並んでいたのを借りてきました。
「カルカッタ染色体」では、呪術も技術も両立するインドの懐の深さを書きたかったのかもしれませんが、ゴーシュの描くエピソードの豊かさよりも、マラリア原虫に媒介されて輪廻転生が起こるというような変わった筋立ての方に気をとられてしまいました。

その点「ガラスの宮殿」はSFもミステリーもなく、まさに正統派の大河小説。激動の時代を懸命に生き、歴史の大きなうねりの中にのみこまれていった人々の物語です。ビルマ-インド-マラヤで二十世紀を生きた三家族、三世代、百年の物語は魅力的でした。

物語は1885年マンダレーの町から始まります。11歳のインド系孤児ラージクマールは、ビルマ王朝の最期に立ち会い、その時に出会った十歳のビルマ族少女ドリーと二十一年の時を経て、幽閉されたビルマ国王と王妃が暮すラトナギリで再会しました。

ラージクマールとドリーの息子たち、ラージクマールの恩人で中国系のサヤー・ジョンの孫、ドリーの友人でインド抵抗運動の指導者ウマの甥や姪は、運命に導かれるように再会し別離します。これは時間の流れのままに進行する若々しい愛の物語でもあるのです。

チーク材の運搬に携わる象使いたちと象とのエピソードは素晴らしく力強く、不思議な話は不思議をそのままに味わう事ができました。物語の最後1996年に、ラージクマールの孫ジャヤは、ラトナギリ、マレーシア、ヤンゴンへ旅をし、その時に出会った人物からミャンマーの現在の情勢にまで続く、過去の長い物語を聞くことになります。
面白かった↓(反転)でも
最後の場面はちょっと何だけどね^^
登場人物がビルマ名とインド名の二つの名前をもっていたりもしますが、わかりやすい通称が使われ混乱することもありませんでした。図書館に返却する前に主要な登場人物の名前だけでも書きとめておきましょう。クリックすると多少ネタバレかもしれませんのでご注意ください。
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