壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

武蔵野倶楽部

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武蔵野倶楽部 村松 友視
文藝春秋 2007年 1750円

図書館の新刊コーナーで見つけた本です。「時代屋の女房」くらいしか読んだ事がありませんが、長いこと住んでいた「武蔵野」にひっかかって読むことにしました。

吉祥寺、神楽坂、金沢、神戸、一ノ関、札幌――この六つの都市でひっそり営まれる店をめぐってえがかれた大人のための物語です。カウント・ベイシーと親交のふかかった一ノ関の“ベイシー”や、神戸の伝説のジャズバー“SONE(ソネ)”、年齢も職業もばらばらの顔ぶれがつどう、武蔵野や神楽坂のバーなど、家庭でも仕事場でもない安息の場所でくりひろげられる、穏やかな会話が魅力の一冊。甘すぎないノスタルジーとシックな雰囲気を備えた、手練(てだ)れの文章が味わい深い短篇集

武蔵野倶楽部/あかぎ坂/浅野川/キリストの涙/リターン・トゥ・センダー/夜の神父さん

どれも、人との距離感がテーマなのでしょうか。何がどうという事もないお話ですが、バーでは、他人との距離感が都会的なんです。居心地の良いくらいに親しく、でもそれ以上には踏み込まない関係。それぞれの離婚や震災を経て再会した男女の関係。梗塞の後に最近の記憶を失った自分との距離。別れた父との出会い。どう距離をとるべきなのかわからない、なんともはっきりしない関係。

登場人物は皆いい人ばかりで、ちょっとほのぼのして頭が休まりました。武蔵野倶楽部は吉祥寺にある実在のバーだそうですが、田んぼに囲まれて住んでいる身には、余りにも無縁の世界です(とちょっと拗ねてみる^^)。