壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ブランディングズ城の夏の稲妻

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ブランディングズ城の夏の稲妻 P.G.ウッドハウス
森村 たまき訳 国書刊行会2007年 2200円

去年のお正月にまとめて読んだジーヴスシリーズウッドハウスには、ブランディングズ城シリーズがあって『ゆっくりした脳内にはブタとバラのことしかない、第9代エムズワース伯爵がおさめるブランディングズ城を舞台に、卿の甥と可憐なコーラスガールの恋、ギャリー伯父さんが執筆するお騒がせな回想録などが入り乱れる長編小説』という謳い文句。

お人よしですが、あまり知恵の働かない若旦那バーディーが巻き込まれる日常のトラブルを、賢く利に聡い執事シーヴスが見事に解決してくれるというジーヴスシリーズに比べ、こちらはドタバタのトラブルがしっちゃかめっちゃかのうちに進行します。文章にはたくさんの引用や言及がある(らしい)のですが、物語のほうは本当におばかな話です。豚の誘拐、暴露的回想録、恋の駆け引き。ドミノが次々と倒れて最後まで行き着くように、なぜかすべてのことが自然に解決してしまいます。

1929年に出版されたイギリスのユーモア小説のどこが面白いのかというと、なんと言ったらいいか、大仰な語り口と単純な人格の登場人物と馬鹿馬鹿しい筋立てのマッチ(もしくはミスマッチ)したところかな。思わず笑ってしまうんです、何冊もまとめて読むと飽きるけど。