壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

アイの物語

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アイの物語 山本弘
角川書店 2006年 1900円

二十X世紀の地球はマシーンに支配され、ヒトは都会から離れた山奥に小さなコロニーを作り暮らしています。マシーンの作った製品を略奪することが日常化し、かつてマシーンと闘って敗北した歴史を抱え込んで、マシーンに対して心をひらく事ができません。そんな世界に生まれた一人の物語を愛する少年は、シェへラザードのようなアンドロイドから、いくつもの物語を聞かされるはめになります。シャフリヤールのような少年の心は変るのでしょうか。

よくできた枠物語です。フィクションとバーチャルが混ざり合い、枠の中で語られる一つ一つの物語は、最後の「アイの物語」で融合して、みごとにこの世界を作り上げています。初出をみると、別々に発表された話なのに、器用にまとまっています。AIと人間との係わり合いが、観念的にならずにうまく表現されているのは、その説明を「物語」に託したからなのでしょう。

山本弘という作家を全く知りませんでしたが、「と学会」の会長と同じ人なのですね。博識で数々の引用があり、物語の幅を広げていますが、ゲームからの引用はよくわかりませんでした。それと、ゲーム原作者らしいバーチャルの戦闘場面も、RPG未経験のため、ついていくのが大変でしたが、全体としてとても楽しめました。