二十X世紀の地球はマシーンに支配され、ヒトは都会から離れた山奥に小さなコロニーを作り暮らしています。マシーンの作った製品を略奪することが日常化し、かつてマシーンと闘って敗北した歴史を抱え込んで、マシーンに対して心をひらく事ができません。そんな世界に生まれた一人の物語を愛する少年は、シェへラザードのようなアンドロイドから、いくつもの物語を聞かされるはめになります。シャフリヤールのような少年の心は変るのでしょうか。
よくできた枠物語です。フィクションとバーチャルが混ざり合い、枠の中で語られる一つ一つの物語は、最後の「アイの物語」で融合して、みごとにこの世界を作り上げています。初出をみると、別々に発表された話なのに、器用にまとまっています。AIと人間との係わり合いが、観念的にならずにうまく表現されているのは、その説明を「物語」に託したからなのでしょう。