壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

第九の日

イメージ 1

第九の日 瀬名秀明
光文社 2006年 1700円

◎ ねえねえ、ずっと何もしないで、何の本を読んでいるの?

▲ 何もしないって、本を読んでるでしょ。瀬名秀明の「第九の日」という本で、「デカルトの密室」の続きにあたる小説だよ。

◎ どっちも読んだことがないけど、瀬名さんの「ミトコンドリア・イブ」なら知っているよ。バイオホラーでしょ。

▲ ううん、瀬名さんの書いたのは「パラサイト・イブ」だよ。でも、あのころミトコンドリアが流行ったよね。「ミトコンドリアと生きる」、これも瀬名さんがどこかの大学の先生と一緒に書いた本だけど、その巻末にミトコンドリアが登場する物語がたくさん紹介されていて、その中でもマドレイン・ラングルの「エクトロスとの戦い」っていう児童小説がいいらしい。

◎ へー、読んでみたいな。ミトコンドリアってかわいいよね。

▲ サンリオからでていて、今は絶版になっているらしいから、図書館で探してみようね。ミトコンドリアは、このごろはミトコンなんて呼ばれていて結構かわいいキャラクターだけれど、昔よく教科書に載っていた断面図は、和式〇器みたいで、いただけなかったけれどね。

◎ えっ、なにそれ。

▲ ごめん・・、なんでもないよ。

◎ ところで「第九の日」もミトコンドリアの話なの?

▲ 全然違う、ロボットの話だよ。瀬名さんは、「パラサイト・イブ」のあと「Brain Valley」という、バイオ系のハードSFの大作を書いたんだよ。「パラサイト」以上に、専門用語が氾濫していて、「分かる人には分かる」というマニアックさがけっこうツボだったけどね。

◎ つまり、それって「分からない人には分からない」っていうことでしょ。

▲ すっ、するどいじゃないか。えっとー、こういうSFでは、専門用語は分からなくてもいいんだよ。分かるところは物語に混じって「そう、そう」と言いながら楽しめばいいし、分からないところはちょっと視点を高くして、わけのわからない話をして楽しんでいる人たちを見て、それを楽しむんだよ。その世界観を感じるってことかな。

◎ へー、なんか、オトナじゃん。

▲ まあ大人っていうより、もう年寄りだけどね。それで「第九の日」の前作だった「デカルトの密室」には、ケンイチという知能を持ったロボットが登場するの。ケンイチをつくったロボット工学者の祐輔と一緒に、メルボルン人工知能のコンテストに参加してとんでもない事件に巻き込まれるわけ。あとはほとんど覚えていないんだけどね。ケンイチは物語を書くことを夢見るんじゃなかったっけ。難解なので、何回も読まないと分からないかもしれない。

◎ へっ、何も覚えていないのに、何で本を読むの?  楽しい?

▲ だからメモリーが壊れかけているっていってるでしょ。読んでいる時は楽しいよ。遊園地でジェットコースターに乗るみたいなものかな。ああこわかった、ああ楽しかったっていう情動記憶だけが残るんだよ。「第九の日」は、ケンイチの冒険物語で「デカルトの密室」に比べて短いからすぐ読めるよ。

◎ ふーん。冒険かー、いいなあ。

▲ 引用されている小説を知っている方が、楽しめるけれどね。とにかく、ケンイチっていうロボットがもう、めちゃくちゃかわいくてね。イギリスに一人で旅行に行って、ある村に閉じ込められてしまうのね。そこで、宗教がらみの事件に巻き込まれて、ナルニア国を読んだり、バロック絵画を見て神とは何かなんてことを聞かされるわけ。きっとケンイチは、カラヴァッジョの「エマオの晩餐」も見せられたちがいないよ。たぶんこの絵だよ。ロボットは宗教を持ちうるか?というようなことが議論になるのよ。
イメージ 2


◎ 欧米か


▲ でも、祐輔が日本で大変な目にあって・・・、でもそのおかげで・・・・玲奈とは・・・。とにかくケンイチはかわいくて、一生懸命で、つい感情移入してしまうよ。

◎ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

▲ あれ、どうしたの、すねちゃった? それとも寝た? バッテリー切れか、しょうがないな。充電中に「黒の過程」を読もう。