壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

比類なきジーヴス

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比類なきジーヴス P.G.ウッドハウス 
森村たまき訳 国書刊行会 2005年 2100円

イギリス生まれのユーモアミステリー作家ウッドハウスのシリーズが最近、二ヵ所から刊行されています。文芸春秋社国書刊行会がそれぞれウッドハウス選集、ウッドハウスコレクションとして出していますが、短編は微妙にカブっているようで、3編の短編集と11編の長編があるようですが、以下の八冊が翻訳されています。どれをどのようの順番で読もうかと迷いましたが、結局は図書館の棚に並んでいた4冊を借りてきました。こんなに続けて読むと飽きそうですが、まずは「比類なきジーヴス」から読みました。

比類なきジーヴス The Inimitable Jeeves (Jeeves) 1923 短編集
それゆけ、ジーヴス Carry On, Jeeves 1925 短編集
でかした、ジーヴス!Very Good, Jeeves! 1930 短編集
サンキュー、ジーヴス Thank You, Jeeves 1934
よしきた、ジーヴス Right Ho, Jeeves (Brinkley Manor) 1934
ウースター家の掟 The Code of the Woosters 1938 以上国書刊行会
ジーヴズの事件簿 短編集
エムズワース卿の受難録 短編集 以上文芸春秋


イギリスのユーモア小説の系譜として有名なウッドハウスは初めて読みますが、これは面白い掘り出し物でした。舞台は19世紀から20世紀にかけてのイギリスで、上流階級の若旦那バーディーと、執事(世話係?)シーヴスの日常を、バーディー自身が語ります。お人よしで寛容ですが、あまり知恵の働かないバーディーが巻き込まれる日常のトラブルを、賢い(悪賢いというほどではないが、利に聡い)執事シーヴスが見事に解決してくれます。

次々に降りかかるとトラブルも解決法も、偉大なるマンネリなのですが、そこが実に面白いのです。次から次へと読みたくなる面白さではなく、就寝前のちょっとした読書として最適な面白さです。短編集ですが、話は続いている様でも独立している様でもありますので、先を読み急ぐ必要もありません。

大いなるマンネリ、もしくはワンパターンは、日本で例えて言えば、水戸黄門(TVドラマですが)や、御宿かわせみ(小説の方)でも感じるものですが、ワンパターンに一度、はまってしまうと、心地よいものです。バーディーと、彼の服装の趣味を快く思わないシーヴスのワンパターンの会話は、漫才の掛け合いのようです。