壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

夏の災厄

イメージ 1

夏の災厄 1995年 篠田節子 毎日新聞社

テレビドラマの原作と言うことで見つけた本です。二週間以上前に図書館で借りてきましたが、これから読みます。返却期限が切れているので、はやく読まないといけません。

読みました。テレビドラマより数倍はおもしろかった!かなりよく書き込まれていました。あとがきによれば、ヒーロー不在のパニック小説ということです。埼玉県のベッドタウン昭川市(市の地図-もちろん架空の-が載っていて、好きです)に発生した新型脳炎にまつわる、保健センターの職員や夜間診療所の医者たちの、一夏の活躍を描いています。

こういう分野はパニック小説というのですか。「ホットゾーン」(これはノンフィクション?)や「キャリアーズ」というウイルス物流行の時代に書かれたものでしょうが、この二作に勝るとも劣らないものでした。

地方行政と中央官庁との乖離、地方行政における民間委託の問題、医学界の隠蔽体質、ワクチン接種と副作用の問題など盛り沢山でしたが、イッキに読んでしまいました。二時間ドラマの枠には収まらない内容です(後編があってもいいのにと思いました)。

ドラマでは確か、携帯電話は普及しているのに、インターネットがほとんど使われなくて、矛盾を感じていました。原作は1995年で、十年以上前ですから、一般の多くの人が携帯電話も、インターネット(パソコン通信という言葉で出てきます)も使わない時代です。ウイルスの確認は免疫反応(ドラマではRT-PCR)で行なっていました。感染環についても説明されてました。

ネタバレになりますが、DNAワクチンの承認、蚊の季節が終わったことで沈静化した脳炎ですが、ウイルスは誰も知らぬまま、中間宿主の陸貝(オカモノアラガイ)の中で越冬しそうです。おもしろかった!

原作者の篠田節子はこの作品でなく「女たちのジハード」のほうで直木賞を受賞しています。候補作にはなっているけれど、いわゆるSFは受賞しにくいのですね。