壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

タングステンおじさん

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タングステンおじさん

原題 Uncle Tungsten: Memories of a Chemical Boyhood (2001)
オリバー サックス Oliver Sacks(公式サイト http://www.oliversacks.com/writing.htm )
斉藤隆史 訳 早川書房(2003)2500円

オリバーサックスにしては、医学物でない最近の作品。

「化学と過ごした私の少年時代」という副題のとおり、化学オタクだった少年時代の記憶が生き生きと読み取れます。サックスがこんな少年時代を送っていたとは。裕福なユダヤ系の家族の驚くべき生活ぶりです。

レナードの朝」、「妻を帽子とまちがえた男」、「火星の人類学者」、「左足を取り戻すまで」のような医学物もおもしろかったけれど、これはまた別の、ロアルト・ダールの「少年」のようなテイストを持っています。

少年時代の化学との出会いから、メンデレーエフ放射能、さらには量子力学におよんでいて、メンデレーエフの周期律やラジウムの発見に対する、数十年前の感動を思い出してしまいました。

こんなに化学を愛した少年が、なぜ化学の道に進まなかったのか不思議に思いながら読んでいたら、答えはちゃんと最後の章にありました。これにもなんとなく共感!

「色のない島へ」の後半(図書館の期限で前半しか読めず残念)と「サックス博士の偏頭痛大全」は未読なのでまた今度。