壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

儚い羊たちの祝宴 米澤 穂信

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儚い羊たちの祝宴 米澤 穂信
新潮社 2008年 1400円

青春ミステリはもう無理。だけど本書や「遠回りする雛」など心惹かれる題名で以前から気にはなっていました。ほんの少しのホラーとブラックユーモアがいいですね。

「ラスト一行の衝撃」に徹底的に拘った連作集という触れ込みです。「バベルの会」という読書会が短編同士をつなぐ緩いリンクになっていますが、全体を強く括っているのは大金持ちに仕える召使たちという設定です。「儚い羊たち」というより「儚い執事たち」・・・・(江戸っ子だってねえ、神田の生まれよ)。

↓少々ネタバレです。

『身内に不幸がありまして』
このラスト一行は衝撃というより、ズッコケに近い。ブラックユーモアだけど、一歩まちがえばドタバタ。
『北の館の罪人』
巻末の参考文献『青の歴史』はこの作品。退色によるダイイングメッセージとはなるほどね。
『山荘秘聞』
触れれば切れそうなずしりと重い煉瓦のような塊は、たしかに最終兵器ですね。煉瓦のような本は持ったことがあるけれど、アレはどれくらい重いのか調べたら(もちろんネットで)1000万で一キロだそうです。
『玉野五十鈴の誉れ』
この作品のラスト一行は本当に衝撃で童謡の見立てよりも怖い。今後この歌を聞いたら、もう炊き立てのご飯は想像できません。
『儚い羊たちの晩餐』
作品の最後には、「バベルの会」を全体の枠とする意図が見えますが、「バベルの会」の実体が見えてこなくてよく分かりませんでした。厨娘やAmirstan羊はどこかで読んだことがあって先が見えてしまったので残念。

参考文献にあった国書刊行会の「書物の王国」や中野美代子さんの作品が気になります。