壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

危ない食卓 十九世紀イギリス文学に見る食と毒

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危ない食卓 十九世紀イギリス文学に見る食と毒
横山茂雄編 新人物往来社 2008年 2000円

題名だけ読んでミステリの話かと思って借りてきたら、想像していた内容からはかなり外れていました。英文学会のシンポジウムを一冊の本にまとめたということで、真面目な文学の話でした。われわれが現在抱えている食の問題は19世紀イギリスに代表される近代西欧化社会に端を発するものだという認識から、取り上げられている話題は『食品偽装』『禁酒』『拒食症』『菜食主義』と、なかなか興味深いものです。

19世紀ロンドンでの急激な人口増加がもたらした食品偽装とその告発者の話、ジョージ・エリオット「ジャネットの悔悟」におけるアルコール依存と禁酒運動、ジェイン・オースティンマンスフィールド・パーク」「エマ」における若い女たちの食欲不振など。

一般読者を想定していないので論文は読みやすくはなかったですが、第三部の当時の文献がかなり面白かったです。こういう文献はなかなか翻訳されず、眼にするチャンスは少ないので。(偽装の手口とその告発、当時に認識されていた「拒食症」の症例など。)
図書館に本を返してしまったので、あとは記憶にありません。