壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ミノタウロス

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佐藤亜紀を初めて読みました。あまりの迫力に、最後まで息つかせないほどです。20世紀初めのロシアの大戦と革命の混沌の中で、略奪と殺戮の日々を過ごした少年たちの物語。「人間を人間の格好にさせておくものが何か、ぼくは時々考えることがあった・・。」という最後の方での独白は、「ミノタウロス」として生きることを選ばざるをえなかった少年の叫びなのかもしれません。

しかし、佐藤亜紀さんの文章は、簡潔でありながら圧倒的なイメージを喚起し、冗長さがないので読み手の情動を簡単には動かしません。物語に含まれる寓意を読み手が推し量る事も拒否しているように感じます。だからこそ、物語の世界にのめりこむ事ができるのでしょう。この話を日本の女性が書いたということがにわかには信じられません。