壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

死因不明社会 Aiが拓く新しい医療 海堂尊

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死因不明社会 Aiが拓く新しい医療 海堂尊
講談社ブルーバックス 2007年 900円

題名につられて読みました。まだ読んだことのない海堂さんの新しいミステリかと手に取ったら、とても面白いノンフィクションでした。小説の主人公たちの掛け合いでわかりやすいものになっています。(厚生労働省の変人役人:白鳥さんとはまだ面識がありません^^。)

先進諸国の中で日本は剖検率が極端に低いため、死亡原因がはっきりとしない例が増えているといいます。これはひとえに厚労省の不作為。病理解剖だけでなく、司法解剖行政解剖も施行が低下し、「死因不明社会」は「犯罪天国」と「冤罪地獄」をもたらすものだというのです。児童虐待死や時太山などの具体例が上がっていました。

特に死因が不明のグレイゾーンにある異状死体を扱う行政解剖については、五大都市(東京23区、横浜、名古屋、大阪、神戸)以外には監察医務院がないため強制力がありません。地方では予算もないため行政解剖はほとんど行われていません。

火曜サスペンスでは、美人監察医が白衣を翻して殺人現場に駆けつけていましたが(白衣の前ボタン閉めたら?)、検視はまず警察官が行うので、そういう光景は大都会でも本当は見られない。スカーペッタやマッカラムは現実のところはどうなのでしょうか。

医療関連死(医療過誤だけでなく)だって死因を簡単に明らかにできれば、医師も遺族も救われます。予算も人手も足りない解剖という手段に先立って、画像診断を応用したAi(Autopsy imaging:死亡時医学検索、検視画像法?)を普及させれば、遺体を傷つけることがないので、倫理的な問題も少ない。遺体をCTやMRIにかければ低予算で絶大な効果をもたらすことができるというのです。これを何とか制度化できないかというのが、海堂さんの主張です。

チーム・バチスタの栄光』をはじめとする小説もばっちり宣伝してありました。⇒図書館チェック