壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ヒトはなぜ難産なのか 奈良貴史

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ヒトはなぜ難産なのか 奈良貴史
2012年 岩波書店 岩波科学ライブラリー 1200円

副題は『お産からみる人類進化』
ヒトは、他の哺乳類に比べてダントツに難産だ。原因はヒトとして進化したからだ。直立二足歩行をするために骨盤の形が変化し、また脳の容量が大きくなって産道につかえるようになって、さらに女性の骨盤が変形していった。さらに、他の霊長類に比べて未成熟で生まれてくるのは、胎児が産道を通れるギリギリの大きさが妊娠期間を決めるからだ、つまり、ヒトの難産は人類進化のトレードオフなのだ、ということが、分かりやすく述べられています。

ヒトは進化の過程でどの辺から難産になったのか、という視点で人類進化を論じている点、お産の文化人類学民俗学にも言及していて、とても面白かった。さらに、ヒトの進化の今後として、「もし医療技術の進歩で安全な帝王切開術が確立され、100%の産婦がそれを選んだとしたら、遠い将来、人類のほとんどが正常分娩が不可能な体の構造に変わって、進化の袋小路に迷い込むかも知れない」という言葉に、なるほど!と思いました。