壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

のろのろ歩け 中島京子

ご無沙汰しています。本を読んで読書メーターに記録するだけの日々が半年以上続きました。久しぶりに会った友人にブログの更新がないねと言われて、ここをのぞきに来ましたが、他人のブログのような気がします。
 年末なのに暇になってしまい、(年賀状はまだですが)、読んだ本を思い出してみました。
まずは今読み終わった本から。さかのぼって、できる限り記録しておきます。図書館に返却してしまった本、B○○K ○FFに行ってしまった本はもう思い出せないかも。

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のろのろ歩け 中島京子
2012年 文藝春秋 1300円


中短編3つ。それぞれ三人の若い日本女性の、北京、台湾、台北の街での、さまざまな出会いが、リアルにあるいは少々ファンタジックに描かれています。

『北京の白い服』:20世紀末、北京でファッション雑誌の創刊をマネジメントする夏美。中国人スタッフと夏美の、価値観や意識の齟齬をとおして、いろいろなものが見えてくる。中国社会の伝統と発展、異文化交流、一人の女性の戸惑いと自信などが、さりげなくうまく書かれている。

『時間の向こうの一週間』:上海万博の直後だろうか、先に赴任した駐在員の夫のもとにやってきた亜矢子は、一人で住居を探す羽目になる。夫に頼まれたからと案内をしてくれたイーミンという男性に連れられて、ノスタルジックな上海を味わい夢のような時間を過ごすのだが・・・。人との触れ合いの妙、現代の中国の抱える混沌など、これもいろいろなことを感じさせてくれる。

『天燈幸福』:母の遺した「台湾にいるおじさん」という言葉をきっかけに台北に旅行にでた美雨は、不思議な旅のなかで、母の過去と台湾の過去に出会う。

第一話で、「漫漫走(のろのろ歩け)とはTake it easy!のような別れのあいさつ。」だと教えてくれたコージって、第二話の光司なのでしょうか。だとしたらまた、一人の男の10年の物語もほんのちょっと見えてくるような気がします。

同じ著者の作品は『女中譚』を読みました。トリビュート作品はとりつきにくかったのですが、これはいいですね。ソフトでさわやかな口あたりの中に、深い味わいがあります。