壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

11 (eleven)  津原泰水

またしばらく実家に行ってまして、帰静してからバタバタと雑用を片付け、やっと読書に戻れました。
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11(eleven)  津原泰水
河出書房新社 2011年 1700円

こういうジャンルの小説に食指が動かなくなって久しいのですが、先ごろ週刊ブックレヴューで絶賛されていたので、どうしても読みたくなって・・・・。耽美、淫靡、隠微、酸鼻、甘美、ゾンビ・・とバラエティー豊かな11編。奇妙な味どころか、とんでもなく不思議で異色な異形の短編集でした。ここで描かれる独特な世界は凄みがありすぎです。格別な味なので夢中で読んで、消化不良気味。





見世物興行一座の『五色の船』はおぞましくも美しく、かすかな罪悪感を誘う。
『延長コード』はたくさん持っているから、全部つないで庭の奥まで伸ばしてみたい。
一番怖い『追ってくる少年』は、今夜の夢に出てきそう。
逃れることのできない『微笑面・改』は圧倒的に迫ってくる。
琥珀の中に閉じ込められた話のように不思議な感覚の琥珀みがき』
キリノという同級生の少女の思い出を語る、この語り口の妙。
親の抑圧から逃れようとした少女の好奇心の先にある『手』
『クラーケン』という犬を飼う女の異常な日常。
猟奇殺人事件を巡るミステリではないのだが『YYとその身幹』
発想はSFだが、もしかしたら悲恋物語かもしれないテルミン嬢』
『土の枕』は身代わり出征し、名前を失った男の悲喜劇。こんな短い小説なのに圧倒的な存在感です。