一ヶ月以上休眠していましたが、9月になってからやっと朝晩が涼しくなり、諸般の事情も落ち着き、読書に戻れます。
この一ヶ月に読んだ本は数冊。行きがかり上、必要があって読んだ本が殆どなので、記事にできるのはこの一冊です。
スプーンと元素周期表 サム・キーン
「最も簡潔な人類史」への手引き
The Disappearing Spoon: And Other True Tales of Madness, Love, and the History of the World from the Periodic Table of the Elements
松井信彦訳 早川書房 2011年 2300円
この一ヶ月に読んだ本は数冊。行きがかり上、必要があって読んだ本が殆どなので、記事にできるのはこの一冊です。
スプーンと元素周期表 サム・キーン
「最も簡潔な人類史」への手引き
The Disappearing Spoon: And Other True Tales of Madness, Love, and the History of the World from the Periodic Table of the Elements
松井信彦訳 早川書房 2011年 2300円
そんな周期表にまつわる小ネタ、大ネタをちりばめたのが本書です。元素を順に紹介していくなんていう陳腐な構成ではなくて、戦争、芸術、政治、経済といった歴史を縦糸に、いろんな元素を織り込んでいくので読み物として面白かった。また登場する化学者たちの人間味あふれた行動は、浮世離れした数学者の奇矯さとは異なっている。化学的な発見は、純粋な科学にとどまらず、実利に直結するためなんでしょうね。
『戦時の元素』の章では、アテネとスパルタの硫黄を用いた化学戦から、第一次大戦の塩素、弾頭に使われたタングステンで大儲けしたポルトガル、携帯電話などの小型のコンデンサーに使われるタンタルやニオブを含む鉱石の産地であるコンゴでの紛争の構造など、どれも興味深い。
元素名を読み込んだ歌(youtube)や、元素名アナグラムなど、面白い話題も多数。元素周期表に関する読み物で面白かったのは、オリバー・サックスの自伝『タングステンおじさん』とプリーモ・レーヴィの短編集『周期律』でしたが、この話も出てきました。