壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

使命と魂のリミット 東野圭吾

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使命と魂のリミット 東野圭吾
角川文庫 2010年 740円

一週間ほど家を離れているので、気軽なミステリが続きました。『プラチナデータ』に比べれば少し持ち重りのする人間ドラマ。

「医療ミスを公表しなければ病院を破壊する」突然の脅迫状に揺れる帝都大学病院。「隠された医療ミスなどない」と断言する心臓血管外科の権威・西園教授。しかし、研修医・氷室夕紀は、その言葉を鵜呑みにできなかった。西園が執刀した手術で帰らぬ人となった彼女の父は、意図的に死に至らしめられたのではという疑念を抱いていたからだ……。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起こるのか? 大病院を前代未聞の危機が襲う。

脅迫事件が危機に向かって進行する中で、夕紀と母の親子関係、師である西園との関係、犯人譲治と望の男女関係が絶妙なバランスで動いていきます。そして、夕紀と譲治のそれぞれの過去からの脱却がさわやかに描かれています。さわやか過ぎて物足りないといえば物足りないですが、夕紀が亡き父の思いを知った場面に、素朴に感動しました。