壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

反骨の画家河鍋暁斎

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反骨の画家 河鍋暁斎
狩野博幸 河鍋楠美 新潮社 トンボの本 2010年 1500円

幕末から明治にかけて活躍した絵師「河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)」の没後120年記念の展覧会が三島の佐野美術館で開催中(9月4日から10月11日まで)。今週見に行く予定ですので、ちょっと下調べ。

七歳で浮世絵師歌川国芳に師事、十歳から狩野派で修行した暁斎は、正統と異端の二重性をもっています。仏画美人画、歴史画、戯画、幽霊画、春画、挿絵、意匠など、多彩な作品を残し、その圧倒的な技術力と斬新な発想によって、明治初頭に来日した外国人を魅了し、海外に紹介されて人気を博しました。

あの三菱一号館を設計した英国人建築家のジョサイア・コンドルは、暁斎に弟子入りして『暁英』という雅号を持っていたそうです。コンドルの書いた伝記『河鍋暁斎』が岩波文庫にあるので、そのうち読みましょう。海外では北斎に次いでの人気なのに、日本では一般にはすっかり忘れ去られ、21世紀になってやっと展覧会などが催されるようになったとのことです。

反骨なのか風刺なのか冗談なのか、『五聖奏楽図』(明治四年)では磔にされたキリストが扇子と鈴を持ち、三味線を弾く釈迦、笛吹き老子、銅鑼を叩く孔子らが仲良く合奏している図など、思わず笑ってしまいます。キリストの憂い顔をした釈迦如来像、蒸気機関車に乗って極楽巡り。そんな自由な発想が時として官憲の気に障ったのか、明治三年に逮捕・投獄とのこと。

暁斎の画はとにかくすごい。こんな薄い本でもその迫力が伝わってきます。もっと見たくなって、本格的な画集を県立美術館の図書室で閲覧したりして、展覧会に行く前に何やっているんでしょう、私。