壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

転移 中島梓

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転移 中島梓
朝日新聞出版 2009年 1800円

 

昨年5月末に他界された中島梓さんの絶筆。「『ガン病棟ピーターラビット』の続編に当たり、すい臓がんが肝臓に転移した以降の2008年9月から亡くなる直前の5月半ばまでの日記形式のエッセイです。病状が進んでかなりの痛みを抱えながらも、連載の『グイン・サーガ』を書き続け、ジャズピアノのセッションをこなしてしまうという前向きな生活ぶりは、闘病記を形容するのによく使われる「壮絶」や「凄絶」というのとは違って、「ひたむき」という言葉がふさわしいかもしれません。日記ですから、ガンの痛みやままならない食事に関する記載が多いのだけれど、死を意識しながらも生きたあかしとして音楽や著作に打ち込む姿、そしてまさに絶筆というような終わり方は、万感胸に迫るものがありました。




中島梓さんの亡くなった一ヶ月後、私の夫も同じ病気で他界しています。手術の術式から抗がん剤の種類、肝転移の様子までこの本に書かれているのと同じでした。中島さんの訃報を目にした時は大変にショックでしたし、今まではガンの闘病記を読むだけの精神的余裕もありませんでした。最近になってこういうものを読もうという気持ちが少し出てきましたが、読み終えてみればやはり涙が止まらずに眠れなくなって、気分転換にと読み始めた東野圭吾作品を明け方までかかって読み終えてしまいました。