壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

追想五断章 米澤穂信

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追想五断章 米澤穂信
集英社 2009年 1300円

伯父の営んでいる古書店に居候している菅生芳光は、大学を休学中の身。復学の学資を稼ぐため、古書店を訪れた北里可南子という若い女性の依頼で、彼女の父親の遺品である五編の小説を探し始めます。その五編のリドルストーリーに隠された二十年以上前の事件の真相は?

五編のリドルストーリーがなかなか魅力的で、結末の一行が隠されたままでもいいくらいでした、とはいえ、それだと謎ときにならないので困るのですが。最後に発見された小説の最後の一行にあるように、現実に起きた事件のほうも、真相は結局「藪の中」なのではないでしょうか。そういう意味で外枠の小説全体がリドルストーリーになっているような気がします。

なにか割り切れないものを心に残したまま、故郷に帰るという菅生芳光や、事件の真相にたどり着いたと考える北里可南子は、この先どんな人生を送るのかと想像する余韻があって、地味だけれど、(年配者向きの)いい作品でした。