父さんと母さんは何か隠してる…。ひとりっ子で病弱なぼくは、想像上の兄を作って遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で、かつて本当の兄が存在していた形跡を見つける。1950年代のパリを舞台にした自伝的長篇。
家族の中にある秘密は何らかの形で日々の生活に影を落としているから、「ぼく」の想像上の兄もその秘密の延長だったに違いありません。両親の出会いというロマンチックな物語が「ぼく」の中で語り直されるたびに歪なものが入り込んでいく様子、秘密にしていた過去の出来事だけでなく秘密をかかえている事そのものが家族を押しつぶしていく様子が、シンプルで抑制の利いた静かな文章で綴られていました。