吟遊詩人ミルディンに拾われた、みなしごの少女グウィナの視点で語られるアーサー王の物語です。強い支配欲によってのみ近隣の国を奪取する粗暴なアーサー王が、吟遊詩人ミルディンの紡ぐ物語によって慈悲深い勇者に生まれ変わります。アーサー王の伝説がいかに形成されたかを間近に証言する少女グウィナもまた、ミルディンによって物語の一部にされてしまいました。
現実のアーサーの野卑な行為を実際に見た人々ですら、ミルディンが創作した魅力的な英雄物語のほうを信じていくという「物語の強さ」がうまく表現されていました。物語は『壊れやすいもの』だけど、語った人すべてよりも長く生き続けてきた物語があるとニール・ゲイマンも言っていましたよ。
物語の誕生もおもしろいけれど、少年に身を変られたのち再び少女として暮らし戦乱の中を生きるグウィナもまた素晴らしい。生き生きとたくましく、さいごには自分の望むものを自分の手でゲットします・・・・というような物語が私も好きなんです。