ウルグアイのモンテビデオからかなり離れた土地にヨーロッパ風の邸宅があり、自殺した作家ユルス・グントの親族が暮らしています。作家の妻キャロライン、作家の兄アダムとパートナーのピート、作家の愛人アーデンと幼い娘ポーシャ。かれらは世間から隠遁するように静かな生活を送っていますが、過去をひきずった奇妙な緊張関係にあるのも確かです。
カンザスの大学の博士課程に籍を置く学生オマーは、ユルス・グントの伝記を書くために、親族の公認を得ようと、はるばるウルグアイまで訪ねてきました。その時点から、人々の関係が少しずつ揺らいでいきます。すでに平衡に達して一見動きのない人間関係が、オマーという新しい人間の参加によって平衡係数が大きくずれて、新しい平衡に向かって反応し始めるのです。さらにその動きはオマーの恋人ディアドラの出現によりさらに加速します。
反応し変化し始めた人間関係の行き着く先はどこなのか知りたくて、明確な人物像、会話が半分以上を占めるテンポのよい流れ、映像イメージが容易に湧き上がる緻密な描写によって、かなりの長編を充分に楽しみました。