壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

カレーソーセージをめぐるレーナの物語 ウーヴェ・ティム

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カレーソーセージをめぐるレーナの物語 ウーヴェ・ティム
浅井晶子訳 河出書房新社Modern & Classic 2005年 1600円

tanzdetanzさんのこちらのブログで教えていただきました。カレーソーセージ(Currywurst)を見たこともないので検索すると、北ドイツの屋台で立ち食いされるかなり有名な食べ物なんですね。でもそんなに美味しいのかしら、と疑問に思いました。炒めたソーセージにケチャップとカレー粉をかけただけの余りにもシンプルなものです。

カレーソーセージの発祥の地はどこか?諸説ある中で、語り手の「僕」が主張するのは、1947年のハンブルグ。小さい頃に訪ねた伯母の近所に住んでいたブリューガー夫人がカレーソーセージを「発見」したのだといいます。その発見の話を確かめたくて老人ホームに居る彼女(レーナ)を訪ねました。

レーナが語るのは、夫が出て行き子供とも別れて暮らす中年の彼女が敗戦直前に若い脱走兵ブレーマーをアパートにかくまったことでした。役所の食堂の責任者として働く彼女は、ナチスに屈することなく冷静な日常を送っていたのに、敗戦が近づくと、彼を引き止めたくてドイツ降伏の事実を隠してしまいました。

戦後、幼い孫を養うために屋台の商売を始めたレーナの逞しさは見事です。闇市で取引をして食料品を手に入れた彼女は、ある偶然でカレーソーセージを「発見」するのです。

この発見の場面で、カレーソーセージがむしょうに食べたくなりました。とっても美味しそう。そして、レーナの周囲のいろいろな人たちの話を知るうちに、敗戦当時のドイツ庶民の様子がしぜんと理解できるような気がします。