文学とワインを同等に論ずるという知的で上品、かつおしゃれなエッセーです。文学論もワイン論もかなり専門的過ぎて、比喩が理解できなかったものも多々ありました。正直、ワイン論にはあまり興味がもてなかったのですが、たった5ページの中で、文学とワインを一つのテーマで平行に語るということを試みた鴻巣さんの心意気のようなものを感じます。なかなか難しかったであろうこの試みを、毎月連載で二年間25編も続けた技量にも感心します。
感動が残って、感想が残らない作品には何かが欠けている。(p35)一瞬の興奮や感動がひいてから始まる余韻の中に本(ワイン)の実の姿がある。(P58)という言葉に、納得しました。デュ・モーリアの「レベッカ」の怖さは実際に姿を現さない先妻の気配にあるのではなく、顔の見えない語り手にある(P61)という話を聞いて再読したくなりました。
もう残り少ない今年、最後には、手ごたえのある小説を読みたいと思います。年内に読み終わるように頑張ってみます。