壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

タナスグ湖の怪物 グラディス・ミッチェル

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タナスグ湖の怪物 グラディス・ミッチェル
白須清美訳 論創海外ミステリ 2008年 2000円

グラディス・ミッチェルの4冊目「タナスグ湖の怪物」は、ブラッドリー夫人シリーズの48作目、1974年に書かれたものです。邦訳された6冊の中では一番新しいけれど、残りがまだ60作もあるのです。邦訳は順序もばらばらに、すべて異なる出版社から出ていて様子見の状態なのでしょう。人気が出ればシリーズ化されるかもしれませんが、読みにくくて分かりにくいという声もあり、シリーズ化は無理かなとも思います。

サー・ハンフリー・カルショットはスコットランドの小さな湖での怪獣の目撃談を信じて、家族や友人で調査隊を編成し、ひと夏を湖畔で過ごすことになりました。一行の中には巨大生物の存在を信じるものは少なくて、それぞれの思惑があってこの調査隊に参加しています。ブラッドリー夫人の孫娘サリーはネッシーの存在を信じているので調査には熱心です。ところがサリーは山小屋で、ある参加者の遺体の第一発見者となり、おばあちゃんに助けを求めます。

素人調査隊のドタバタは滑稽ですし、「タナスグ湖の怪物」は今までのものよりは読みやすくて分かりやすかったけれど、事件の背景は奇抜です。当時過熱気味だったネッシー騒動を揶揄しているのでしょうけれど、どこかピントの外れたミステリです。サリーは謎の生物が湖でウインクするのを見たような気がしていますし(原題は「Winking at the Brim」)、最後には怪獣が本当に(?)現れたりするんです。一番意外だったのは、牧師の結婚相手でした。四冊目にしてやっと、このピントの外れ方が面白くなってきたと同時にすこし飽きてきました^^。

未読なのは「ソルトマーシュの殺人」と「トム・ブラウンの死体」です。「トム・ブラウンの死体」はパブリック・スクールでの殺人らしいのでちょっと読みたいのですが、絶版で県内の図書館にはありません。アマゾンで古書として、とんでもない高値になっているから、そのうち復刊されるかもしれません。




重箱の隅①:「P.G.ウッドハウスが指摘したように、ニューヨークでオーガスタス・マナリング=フィップスと名乗らないのと同じ」(p173-4)とはなにか。バーディー・ウースターがニューヨークにいったときの話はまだ読んでいないので「ジーヴズの事件簿」をチェック(しなくてもいいような気もするが)。
重箱の隅②:p206 ストリキニーネ分析法で重クロム酸カリウムの化学式が間違っている(事件には関係ないし)。