壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

死んでも治らない 若竹七海

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死んでも治らない 大道寺圭の事件簿 若竹七海
光文社カッパノベルズ 2002年 800円

元警官の大道寺圭が初めて書いた本が「死んでも治らない」。おバカな犯罪者たちの間抜けな失敗談を紹介したところ、間抜けな犯罪者たちが次々と大道寺に近づいて彼を利用しようとします。あまりに身勝手な犯罪者たちに、大道寺の鉄槌が下ります。コージー・ハードボイルドですって!

この五編の連作短編の間をぬうようにして、警官時代に最後に大道寺が手がけた事件が進行するという、なかなか凝ったつくりです。警官大道寺圭と、作家大道寺圭は別人格かと思うくらい印象が違うので、この辺に何か仕掛けがあると疑ってみたのですが、ハズレでした。充分に納得がいくような終わり方で満足しました。

作家大道寺の五編の連作短編は雑誌に連載されていたものですが、警官大道寺の事件はカッパノベルズになったときの加筆書き下ろしだそうで、こんなに巧くまとめるなんてすごい! もうひとつの楽しみは、葉崎シリーズと微妙につながっているところ。ハードボイルド作家角田港大や前田家が出てくるので、なんだかうれしい。確か「ヴィラ・マグノリア」で出てきた一ツ橋という刑事が、この辺の出身だったような気がします。そして、コージーなものには幼馴染がかかせないらしい。