壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

花粉の部屋 ゾエ・イェニー

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花粉の部屋 ゾエ・イェニー
平野卿子訳 新潮クレストブックス 1999年 1500円

花粉症の最盛期には、こんな名前の本を読むのもつらいので、読むなら今かと、ドイツ文学のコーナーで見かけてなんとなく借りてみました。クレストブックとしてはずいぶんと薄い本です。

ヨーの両親は幼いころ離婚し、一緒に暮らしていた父親は再婚することになった。近くに住んでいた母親も再婚して遠い町に引っ越した。十二年たって母親と再会したヨーはまたも母親に捨てられることになる。家族を求めても求めてもかなわぬ思い。

硬質な口調で感情をまったく交えずに描かれるヨーの孤独感は、読んでいるときにはピンとこなかった。しかし、読み終えてもう一度読み返したら、少女の孤独感が部分的には理解できるような気もする。最後のシーンでヨーが待つ雪は何を意味するのだろうか。

訳者あとがきには、ゾエ・イェニーの愛読書は吉本ばななであるということから、両者が比較して論じられていたけれど、そういえば、私は吉本ばなな作品を一冊も読んだことがないのです。