壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

百年の誤読 海外文学編 岡野宏文X豊崎由美

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百年の誤読 海外文学編 岡野宏文X豊崎由美
アスペクト 2008年 1600円

前作の「百年の誤読」の面白さにつられて、海外文学編も読んでみました。20世紀100年の100冊の古典的名作を、現代のものとして誤読してみたというのです。残念ながら前作のような鋭いツッコミとばかばかしいボケは少ないのか、はたまた読み手のノリがいまいちなのか、大笑いというわけにはいきませんでした。

しかし、お二人の掛け合い漫才は相変わらずテンポよく、どちらかというとまじめな書評が多く、勉強にもなりました(たとえば、ベケット演劇と能との類似性なんていう)。びっしり書き込まれた脚注は相変わらずで、読み飛ばさないように注意すればクスッと笑えます。

あとがきで岡野さんが書いているように、選本の基準が前作のような「ベストセラー」ではなく、あくまで「名作」であるため、すごく売れたけれどどうしようもないヘナチョコ本が入っていません。ベストセラーのダメ本を笑うということは、本だけでなく読者も笑いの対象になっているわけで、自嘲的な面白さがありますからね。日本でベストセラーになった海外本は前作で取り上げてしまいましたので、今回はその面白さにも欠けます。

海外文学編には翻訳という問題があって、訳文が古くなるのは否めません。トヨサキさんはとくに人称名詞が気になるようで、思春期の男女が互いを「あんた」で呼び合うのは許せないらしい。「青い麦」は堀口大學ですから・・。人称名詞のトレンドが時代とともに変化する日本文化っておもしろいけど・・。新訳で再読したいのもいくつかありました。

100冊のうち、うろ覚えで読んだと思われる本は半分弱で、内容を覚えているのはさらにその半分以下。特に1980年以降は未読本が多くて、読みたい本リストに載せたまま忘れていました。長そうだけれどやはり読んでみたい本、長年読もうと思っていたけれど、いまさら読まなくてもよさそうとホッとした本などいろいろ。

どんな100冊が取り上げられているかも楽しみの一つですから、目次を転記するとネタバレになりますが、自分用にメモしておきます。太字は読みたい本や、新訳で再読したい本。


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1901~1910 「三人姉妹」チェーホフ/どん底ゴーリキー/「荒野の叫び声」ロンドン/「ジャン=クリストフ」ロラン/「最後の一葉」ヘンリー/「車輪の下」ヘッセ/「ニルスの不思議な旅」ラーゲルレーヴ/「青い鳥」メーテルリンク/「狭き門」ジッド/「マルテの手記」リルケ

1911~1920 「ブラウン神父の童心」チェスタトン/「神々は乾く」フランス/「失われた時を求めてプルースト/「変身」カフカ/「狂人日記魯迅/「月と六ペンス」モーム/「ワインズバーグ・オハイオ」アンダーソン/「チボー家の人々」デュ・ガール/「三人の巨匠」ツヴァイク/「ロボット」チャペック

1921~1930 「ユリシーズジョイス/「青い麦コレット/「魔の山」マン/「グレート・ギャツビー」フィツジェラルド/「アクロイド殺し」クリスティ/「燈台へ」ウルフ/「ナジャ」ブルトン/「チャタレイ夫人の恋人」/「恐るべき子供たちコクトー/「マルタの鷹」ハメット

1931~1940 「夜間飛行」サン=テグジュペリ/「大地」バック/「夜の果てへの旅」セリーヌ/「八月の光」フォークナー/「Yの悲劇」クイーン/「血の婚礼」ロルカ/「北回帰線」ミラー/「怒りの葡萄スタインベック/「さらば愛しき女よ」チャンドラー/「誰がために鐘は鳴るヘミングウェイ

1941~1950 「異邦人」カミュ/「人間喜劇」サローヤン/「ガラスの動物園」ウィリアムズ/「伝奇集」ボルヘス/「うたかたの日々」ヴィアン/「遠い声 遠い部屋」カポーティ/「裸者と死者」メイラー/「泥棒日記」ジュネ/「一九八四年」オーウェル/「ナルニア国物語」ルイス

1951~1960 ライ麦畑で捕まえて」サリンジャー/「ゴドーを待ちながらベケット/「華氏四五一度」ブラッドベリ/「悲しみよこんにちはサガン/「ロリータ」ナボコフ/「時間割」ビュトール/「路上」ケルアック/「長距離走者の孤独」シリト-/ブリキの太鼓」グラス/「走れウサギ」アップダイク

1961~1970 ソラリス」レム/「カッコーの巣の上で」キージー/「寒い国から帰ってきたスパイ」ル・カレ/「調書」ル・クレジオ/「アルジャーノンに花束を」キイス/「アメリカの鱒釣り」ブローディガン/「百年の孤独」ガルシア=マルケス/「ゲド戦記Ⅰ」ル=グウィン/スローターハウス5ヴォネガット・ジュニア/「めくるめく世界」アレナス

1971~1980 「キマイラ」バース/「重力の虹」ピンチョン/「モモ」エンデ/「収容所群島ソルジェニーツィン/「死父」バーセルミ/「交換教授」ロッジ/「シャイニング」キング/「ガープの世界」アーヴィング/「冬の夜ひとりの旅人が」カルヴィーノ/「薔薇の名前エーコ

1981~1990 「ヴァリス」ディック/「真夜中の子供たち」ラシュディ/「ぼくが電話をかけている場所」カーヴァー/ニューロマンサー」ギブスン/「存在の耐えられない軽さ」クンデラ/「侍女の物語」アトウッド/悪童日記」クリストフ/「赤い高粱」莫言/「羊たちの沈黙」ハリス/「日の名残り」イシグロ

1991~2000 「アメリカン・サイコ」エリス/「イギリス人の患者」オンダーチェ/「ジャズ」モリスン/「ホワイト・ジャズ」エルロイ/「海の上のピアニスト」バリッコ/「ソフィーの世界」ゴルデル/「朗読者」シュリンク/ボーン・コレクター」ディーヴァー/アムステルダム」マキューアン/「恥辱」クッツェー