壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

香水 ある人殺しの物語 パトリック・ ジュースキント

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香水 ある人殺しの物語 パトリック ジュースキント
池内紀訳 文春文庫 2003年(単行本1988年) 770円

「匂い」つながりで読もうと手に入れたまま、「匂いの帝王」の胡散臭さに当てられて、積読しておいた本。この本はもっとはやく読めばよかった。物語もテンポがよくて面白いうえ、池内紀さんの訳が闊達で小気味良く、一気に読んでしまいました。

18世紀、パリの裏町に生まれたグルヌイユは体臭が全くない上、とび抜けた嗅覚を持ち、調香師として類まれな香水を作り出す。しかしグルヌイユの求めているものは芳香だけではない。パリで身に着けた技術に飽き足らず南フランスで新しい技術を学び、工夫を重ねて、自分を表現するにも、記憶を記録するにも、すべて匂いを調合した。さらにすべての生き物から匂いを抽出する事を試み、ついには禁断のにおいに手を出す。

香水という題名なのに、冒頭から悪臭に満ちた描写で始まります。臭い臭い。匂う、臭う。18世紀のパリはこんなに臭かったんですか。グルヌイユに何かしらの知識を伝授した人たちは、匂い(臭い)ばかりか精気まで吸い取られてしまう。最後は映画の予告編で見てしまった場面よりさらに衝撃的でした。


面白そうな「におい」の本はないかしら、多少臭くたってしょうがない。