壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

七人のおば

イメージ 1

七人のおば パット・マガー
大村美根子訳 創元推理文庫 1986年 800円

結婚し渡英したサリーの許へ届いた友人の手紙で、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らされた。が、彼女にはおばが七人いるのに、肝心の名前が書いてなかった。サリーと夫のピーターは、おばたちと暮らした七年間を回想しながら、はたしてどのおばなのか、見当をつけようと試みる。

原題「The Seven Deadly Sisters」の通り、登場する七人の叔母さんも伯母さんも本当にdeadlyです。読んでいる内に腹が立ってくるくらいです。七人のキャラクターが明確に特徴付けられているので、読み終わったあともそらで全員の名前を挙げることができるくらいです。

クララ(世間体第一で家長としてこの家を支配する長女)、テッシー(ひっつめ髪の女教師)、アグネス(他人に厳しく自分に優しい)、イーディス(アルコール依存)、モリー(男性アレルギー)、ドリス(奔放に自分の愛を貫く)、ジュディ(金銭感覚の無い甘やかされた末っ子)。

七人の女性たちの愛憎劇が、なんだかバルザックもどきで面白いのです。アームチェアディテクティブ物で、被害者も伏せられているのですが、被害者がわかったら犯人もわかってしまいます。最後に張られた伏線はわかりやすくて、謎を解いたという満足感も味わえました^^。

パット・マガーが1946年に書いたという作品で、こんなに面白いのに、作者の名前さえ知りませんでした。翻訳の出るのが遅かったためでしょう。第二次大戦前後のこの時代にはまだ掘り出し物があるかもしれません。以前ロジャー・スカーレットを図書館で見つけました。現代ミステリーを読もうと思いながら、ついつい懐古的になってしまいます。