壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

御宿かわせみ32 十三歳の仲人

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御宿かわせみ32 十三歳の仲人 平岩弓枝
文春文庫 2007年 476円

「オール読み物」に連載されてから数年後に、単行本からやっと文庫になります。初めの巻からずっと文庫で読み続けたものですから、今さら、この習慣を変える事はないでしょう。「オール読み物」ではもう“明治”編が始まっているらしいのですが、たぶん幕末の“今”がいつなのか?はっきりとはわからない世界です。

昭和48年に連載が始まってから、三十数年よく続いたものです。はじめ25歳だったおるいさんは、でもそんなに年をとっていませんね(おいくつなのかしら)。

十八年目の春 :白骨は二百年前のもの。江戸の町はチョッと掘り起こすと、いろんなものが出てくる。十八年たって明らかになる親子の情とは? 

浅妻船さわぎ :英一蝶の絵「浅妻船」の偽物にまつわる殺人事件。久しぶりの捕物帖。

成田詣での旅 :女番頭お篠の人生。十五年もたてば人の心も変るでしょうか。切ない話です。

お石の縁談 :かわせみの女中、山出しの田舎者だったお石は十八歳。すっかりきれいになって、今ではお吉の片腕。その嫁入り話がはじまります。

代々木野の金魚まつり:お石は腕っ節も相当なものです。若棟梁、しっかりしてよ。

芋嵐の吹く頃 :大店のご隠居の心に吹く隙間風。親子の情とはこういうもの。

猫芸者おたま :常磐津の名手おたまの弟正太は、攘夷派に金で雇われて、異人さんに切りつけた。

十三歳の仲人 :お石ちゃんが故郷の野老沢(ところさわ)に嫁入る。その話を聞いて若棟梁小源は・・・。十三歳の麻太郎に、三十歳の小源が諭されました。「しっかりしろ、小源、男らしくないぞ」。七歳の千春とともに仲人をします。

麻太郎はますます父親似になっていくようです。東吾さんと読者だけは知っているのですが、麻太郎と千春は従兄妹同士以上に血が濃いのです。千春はそれとは知らずに「麻太郎兄様」と慕っています。この二人が悲しい目にあいませんように。