壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

オルファクトグラム

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オルファクトグラム 井上夢人
毎日新聞社  2000年  1900円

岡嶋二人「クラインの壷」を読んで、いつかは読もうと思っていた本です。ブンガク的なものから抜け出すのに、エンタメ系で読みごたえのあるものが読みたくなり、ラジオドラマで一部聞いたこともあって、かなりの厚さながらイッキ読みしました。知覚と認知の問題はやはり興味深く、面白かったー。映画もあるみたいですが、この本に関しては、CGより想像の方がいい。

犯人の後を視覚化された匂いで追うという設定のためには、ミステリー仕立てもやむをえないわけで、その部分はそれほどでもなかったけれど、「オルファクトグラム」というアイデアは抜群。ドラえもんのポケットから、「オルファクトグラム装置~」とか言って出してもらいたいほどです。その装置をつけると匂いが視覚化されて・・・。2004年のノーベル医学生理学賞は、嗅覚受容体をコードする遺伝子の研究に授与されていて、マウスの嗅球上の「匂い地図」は、まさにOlfactogram。

「パフューム ~ある人殺しの物語」の方は、原作(パトリック ジュースキント)もまだ読んでいませんが、映画も見たい。その主人公で驚異的な嗅覚をもつグルヌイユに見立てられたのは、匂いの分子振動説を提唱したルカ・テューリン。匂いを即座に言葉に置き換えることのできる天才だそうです。そのノンフィクションが「匂いの帝王」で、これも借りてきました。これから読もうと思いましたが、もう真夜中。

樟脳臭をもつ物質の一つとしてでてきたシクロオクタンの化学式が間違ってるのね。こういう所はついチェックしてしまう。C6H18ではなくてC8H16ですが、これは何と参考にしたらしい専門書の文献が間違っていて、E・アムーア「匂い-その分子構造」昭和47年 57ページで、シクロオクタンがC6H18になっているのです。(たまたま持っていた本なので確認しちゃいました。)