地中生命の驚異 秘められた自然誌 D.W.ウォルフ 2001年
長野敬 赤松真紀 青土社 2003年
何やらあわただしい事の連続で、一ヶ月の不在でした。今週末は予定なしなので、年末になる前にまとめてアップしたいものです。
この本には、地中の極限環境微生物extremophileに関する記述があるのは知っていましたが、サックスのオアハカ日誌で引用されていて、地下世界の途方もなく大きいネットワークに興味をもちました。土壌生態学の専門家の本ですので、引用文献や生物名の索引もきっちりしています。それでいて面白いし、訳文も読みやすい。
第一部では、始原生物の地下環境由来説、粘土鉱物が触媒的に働く事、地下深部で見つかった細菌群の量の多さと多様さと古細菌(Archaea)の発見を紹介しています。アーカエアがドメインとして確立するまでにも紆余曲折があったそうです。
第二部は、窒素固定の話で、今日農業向けに販売されるマメ科の植物の種子には、遺伝子操作や選抜で、窒素固定能を最大にしたり、リゾビウムが接種されているそうです。もっとも読みたかったところは第5章の地下の結びつきで、植物の根と土壌菌類(真菌)の共生関係について説明があります。
菌根とは真菌類が植物根に侵入して特有の構造を作っている一種の共生体です。トリュフは外生菌根の子実体だそうです。マツタケもそうなんでしょうね。菌根はさらに異種植物の間をつないで養分のパイプラインとして働くらしい事、このような緩やかなネットワークが広大な土地に広がる事、ナラタケの一種の遺伝的に均一な一個体は1000トンに及ぶ事など、驚くべき事実がたくさんありました。
ダーウィンのミミズの話は有名ですが、原著は読んだことがありません。著作の「ミミズと土」が平凡社から出ているようです(図書館にあったけれど、子ども向きの「ダーウィンのミミズの研究」 新妻 昭夫著も読みたい。福音館の「たくさんのふしぎ」シリーズ)。ダーウィンの仕事ではありませんが、ミミズ交尾後の繭などトリビアがたくさんあります。ミミズの養殖と糞土の生産が商業レベルで行なわれている現在をダーウィンが知ったら何というでしょう。
平原の生態系の要である北米大陸のプレーリードッグ、人的要因による土壌浸食など。
シータの「大地に根を張り 土と共に生きよう 種と共に冬を越え 鳥と共に春を歌おう」(宮崎駿)という言葉を思い出しました。