壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

はだかの太陽 アイザック・アシモフ

はだかの太陽 アイザック・アシモフ

小尾芙佐 訳 ハヤカワ文庫

鋼鉄都市』の続編。地球と宇宙国家連合との関係などの世界観は前作で充分に説明されていたので,順序通りに読んだ方が物語のストーリーを楽しむことができる。

地球での宇宙人殺人事件を解決した刑事イライジャ・ベイリは,殺人事件の捜査要請を受けて任地へ向かうのだが,今度はなんと惑星ソラリア。地球人は何世代にもわたって閉鎖空間で暮らしているために広場恐怖症で宇宙が怖いのだが,決死の覚悟で宇宙空間に旅立った。

かつて相棒として働いた宇宙人ロボットのダニール・オリヴォーとソラリアで再会し,捜査を始めることになる。ソラリアは人口が少なく高度に過疎で,多数のロボットによって文明が支えられている。人間同士が直接対面で会うことは嫌悪されていて,ほとんどすべてのコミュニケーションは三次元映像装置を介して行われている。人間同士の接触がないのにどうやって殺人事件が起きたのか。ロボットは例の「ロボット工学三原則」で殺人は論外なのだが,では誰が犯人なのか。ベイリは精力的に動いて関係者との直接または間接的な面接を行いながら,不可能犯罪を解いていく。

ソラリアに来たときには,狭い空間に閉じこもって暮らす人口稠密な地球社会を劣ったものと考えていたベイリだが,事件解決を通して地球の特性こそが未来につながる強みだという事を確信する。

 

続編も読みたいが『夜明けのロボット』『ロボットと帝国』は絶版。『鋼鉄都市』に映画化の話もあったそうだが今は立ち消えのようで,映画になって電子版を出してほしい。

SFとしてもミステリとしても成立する面白い作品で,1950年代に書かれたのに,オンライン食事会とかオンラインデートとか,ソーシャルディスタンスとか,コロナ禍の私たちの言葉でソラリア人たちの様子を表現できるくらい未来を予測していることに感激